ソニーがエレクトロニクス領域で復活する方法に関する考察
少し前の話になりますが、ソニーが今期純損失2300億円、無配当の発表を行いました。原因としては当初エレクトロニクスビジネスの柱と想定していたスマホ事業が大幅に不振だったことがあげられます。
日系のエレクトロニクスメーカーが、主戦場をコンシューマーエレクトロニクスからずらしながら徐々に復活を果たしている中、ソニーの一人負けの様相が続いています。日立はインフラ、パナソニックは住宅、自動車等BtoBの比較的参入障壁の高いビジネスに移ることにより、新興国メーカーとのコスト競争に巻き込まれないようにしながら売上、利益を確保していますが、現状としてソニーはコンシューマーエレクトロニクスにこだわる姿勢を保っています。
このような状況の中で、ソニーが復活するにはどうすればいいかという議論はいろいろな人がされています。たとえばソニーというブランドを生かし新事業を立ち上げる、現在稼げている金融・音楽・映画・ゲームに特化するなどです。
事業再編・選択と集中により復活した企業はグローバルでも多く、有名な例では家電を捨てたGEやハードウェアを捨てたIBMなどがあげられます。このように、現在持つアセット、事業に基づいて勝てる部分に特化するという戦略は正しく、ソニーもこのような方向で変わっていくのでしょう。
しかし、かつてイノベーティブな商品を次々と出していたソニーが、もう一度エレクトロニクスで復活するにはどうすればいいかを、あえてもう一度考えたいと思います。
エレクトロニクス企業としてのソニー復活の方針
まず、なぜソニーがイノベーティブな新商品を出せなくなったのかについて仮説を立てたいと思います。
最近のソニーは、業績不振への対策とガバナンス強化という取り組みが目立っていたように思います。これにより、新製品や新事業を開発するときにも、うまくいくのか、利益が獲得できるかを確実性の高いデータで証明できなければいけなかったのではないかと考えています。一方、従来からイノベーティブな製品というのは「机の下」「闇研」と呼ばれるような非公式なエンジニアの活動から生まれてくると考えられ、管理の強化、数字上の効率的な開発の追求によりこのような自由な研究が阻害されたのではないでしょうか。
(エレクトロニクスだけにかかわらず、自由な時間によってイノベーションを生む事例は各社で見られます。ex:google,3Mの20%ルール
Google、Yahoo!、HP...成功事例に学ぶ「20%ルール」を導入するポイント | ライフハッカー[日本版])
業績の悪い中で投資家からのプレッシャーもあるでしょうが、イノベーティブな商品を生むような自由な発想を考える時間・環境を整えるということがソニーがエレクトロニクスで復活する喫緊の課題であると考えます。
ウォークマンを生み出したときとは事業環境が違う、エレクトロニクスはライフサイクルとして成熟しておりイノベーションが生まれにくいといった意見はあるかと思いますが、たとえばダイソンが掃除機・扇風機を再発明してヒットしたように事業環境というのは変えられるものだと考えています。
とはいえ、現状の業績では原資がないということが大きな問題になると思います。そこで利益の源泉であるブランド・設計部分に特化し、工場を縮小、ファブレスメーカーになることでキャッシュを確保するということを真剣に考えてもいいのではないかと思います。
もう一度ソニーがクールな製品を生み出しエレクトロニクス業界で復活する。難しいかもしれませんが、そんな期待をしてしまいます。