データの見えざる手ーIoTとAIによるデータ分析で生まれるものー
以前にイケハヤさん等色々な方のブログで紹介されていた本をようやく読んだのですが、ウェアラブルデバイスやセンサーの普及によって取れるデータと、それらをAIを用いて分析することによる社会へのインパクトに圧倒的衝撃を受けたので紹介します。
(行動がU分布に従うという点については以下のブログに詳しいのでそちらに譲ります。)
恐るべき「データの見えざる手」。あなたは「意志が弱い」のではなく、「U分布」に従っていないだけかもしれない : まだ東京で消耗してるの?
近年ウェアラブルデバイスを始めとするあらゆるデバイスにセンサーがつき、あらゆるものがインターネットに繋がる、またセンサーによって取得されたデータが蓄積される世界ができていくと言われています。これはIoT(Internet of Things)と呼ばれ、多くの企業がIoTデバイスの開発を進めています。
しかし、私は、IoTが今後どのようなインパクトを社会に与えるのか、いまいち理解していませんでした。というよりも、そんなデータがあっても使い道がイメージできていませんでした。
この本では、IoTデバイスから取得されたデータを人工知能(AI)に分析させることによって、問題解決の方法が今までと根本から変わる可能性があると述べています。
本書では事例として、ホームセンターの売上改善策立案をAIと小売の専門家で対決させたケースが書かれています。
実験店舗を準備し、棚、カゴ、商品、従業員、入店する顧客等店内にあるものにセンサーを付け、そこから顧客、従業員がどの時間にどこでどのような行動をしたかについてのデータを蓄積します。そして、AIと専門家のそれぞれが売上改善策を立て、その結果どちらがより売上を改善したか勝負しています。
結果として、AIが圧勝したとのことです。AIはデータに基づき、特定の場所(ホットスポット)に従業員を立たせることにより、売上が改善するという仮説を立て、結果としてその施策により売上が大きく改善しました。
この時に面白い点は、なぜそこに従業員が立っていると売上が改善するか、人間には理解できないというところです。おそらく、そこに人が立つことによって、顧客の歩くルートや視線の流れ、他の店員とのコミュニケーションが変わるなど複雑な要素が絡んだ結果なのでしょうが、そこに論理的な説明をする事はできないそうです。
従来からAIの研究は進んでおり、人が与えたルールに沿って動くAIを第1世代、機械学習等の統計手法により判断するAI(googleのサーチエンジン, IBMのワトソン等)を第2世代と呼ぶそうです。それらに対してこのケースに出ているような、自分でルールを構築して仮説を立案するAIを第3世代といいます。近年話題になっているDeep LearningやgoogleのAIが自分で猫の画像を生成したケースもこの第3世代AIの1例です。
第3世代のAIの特徴として、「有効な特徴量を自ら見出す」=「表現の獲得」という点が挙げられます。これはつまり人が仮説を設定することなく、AIが問題解決をするということです。
(ちなみにこのケースに使われたAIは通称ホームズと呼ばれています。第2世代のIBMのAIがワトソンだったところにかかっているようで、ユーモアを感じました。)
このように、第3世代のAIでは、問題解決をする際に人が仮説を設定する必要がなく、AI自身がルールを自分で設定し、有効な変数=特徴量を発見することが可能になっています。そして結果として、人間の論理思考力では解釈できないような、しかし現実としては起きている法則を発見することができています。これは、人よりも高い精度で仮説を構築できるということにほかなりません。
我々コンサルタントの世界では、問題に対していかに精度の高い仮説を立てられるかということが、成果を生み出す重要なポイントだと言われています。
上記のようなAIが一般的になった時、この仮説立案能力自体が必要なくなるとすれば、それは、今まで人間が培ってきた問題解決のプロセスを大きく変えることになるだろうと感じました。そして、その時SF映画で描かれるようなシンギュラリティ(技術的特異点)が本当に生まれるようなそんな気がします。
トランセンデンス レビュー考察 - 思考・妄想の外部化-経営コンサルタントの頭の中-
世界は面白いですね。では。