V字回復の経営@三枝匡ー組織における多くの問題の原因とタコツボを割れる人の重要性ー
私事ですが、先日1年以上関わっていたプロジェクトが終わりました。
今回のプロジェクトではクライアントの全社としてのビジネスモデル転換をテーマとしていたため、多くの部門と関わり、変革の第一波を起こせたと感じています。
また、プロジェクトを通じて企業経営に関して学んだ内容が、偶然読んでいた三枝匡さんの本の内容と非常にリンクしており、とても興味深かったので共有したいと思います。
強い企業の基本は「創る、作る、売る」のサイクルが早く回り、フィードバックによる改善が進むこと
多くの大企業では、開発、製造、営業というように機能別に分化した組織を持っています。そして、この組織間でビジネスの流れが分断することにより多くの問題が発生しています。
今回のクライアントにおいても、部門間、生産拠点間でのコミュニケーションが上手く行かず、ビジネスが上手く回っていない状況があらゆるところに見られました。
例えば、開発と営業が分断してしまうというケースがあります。開発は、「営業が顧客のニーズを拾ってこれない、売るのが下手だ」と言い、営業は「開発が売れるものを作れないから競争力がない」とお互いに相手のせいにしてしまうという悪循環が生じます。
このように社内が分断した状況では顧客の求めるものを迅速に提供できるわけがありません。
これを、本書の中では、 創る、作る、売るのループをいかに早く回すかと表現していました。
本の中では組織構造を機能分化型からビジネスユニット型に変革することで、ビジネスの分断を避け、スモールチームによってサイクルを早く回すというアプローチを取っていました。
一方、今回のケースでは、プロジェクトベースで営業、開発、生産を巻き込んだチームを組成して、顧客の要求を先読みし、それにもとづいて具体的な製品開発、生産、顧客への営業と展開していきました。まだまだ、全社への落とし込みはできていないですが、一定の成果は得られたと感じています。
定量目標を設定し、担当、数値をはっきりさせアクションプランに落とし、実行されているかをきちんとフォローすること、振り返りを行い評価する文化の徹底
従来のクライアント企業は目標設定までは頑張って作りこむものの、その後の実行フォローが弱い体質の企業でした。
ある意味では、危機感、緊張感が目標を設定した時点で一定満足してしまい、現場での実行まで徹底されていない状況になっていました。それに対して今回のプロジェクトでは誰がいつまでに何をするかを明確に見える化して、フォローしていく仕組みを作れたと考えています。このように取り組みに対して、PDCAを回すこと、やりっ放しにしないことは当然やるべきである反面、手間はかかりますし、できていないことが明確にわかってしまうため、意外と徹底できていない企業が多いのでは無いでしょうか。
この取組の、成果が出てくるのはこれからになりますが、プロジェクトを通じて、数値目標を管理する文化、実施した取り組みを振り返り評価する文化を新たに導入できたと感じています。
まとめ
このように、「創る、作る、売る」のループをスムーズに回すこと、目標を設定し、その実現に向けたアクションを確実にフォローすることが強みの源泉となることは、製造業だけでなくWebサービスやアプリケーションを提供する会社でも同様のことが言えると考えています。
今回のプロジェクトを経験して感じたのは、企業の抱える問題の多くは組織間で発生するということです。そして、今回のプロジェクトがある程度成功した要因として、各部門の間を駆けまわり、つないでくれたプロジェクトリーダーの存在がありました。
このような動きは時に他部門の反感を買い、他部門からは越権行為だと言われることもあり、必ずしも評価につながるわけではなく、ミッションとして課されているわけでもありません。
しかし、このように、組織間をつなぐ、タコツボ化した組織の壁を割れる動きが出来る人がいることが変革には重要であるということを身をもって実感しました。
今後自分としても、タコツボを割れるビジネスパーソンになっていきたいと思います。
そしてそのような動きをするためには部門内だけにとらわれない全社を見る視点が必要になります。そこに客観的なコンサルタントとしての第3者的目線の意義があると感じています。
このようなプロジェクトに若手のうちに触れられたことは非常にラッキーでした。今回の経験を他業界においても活かし、これから関わる多くのクライアントをより強く、活力のある企業にしていくサポートをしていきたいと思います。