思考・妄想の外部化-経営コンサルタントの頭の中-

仕事や読書、人々との会話を通して若手コンサルタントが日々考えている事を不定期にアウトプットしています。ビール好きなのでそれに関することも多少。

目標と達成状況のマネジメント方法

「日本企業はイノベーションを起こすのは苦手だが、オペレーションに優れた企業が多い」と言われることが多いですが、本当にそうでしょうか。

オペレーションを改善していく中で重要な要素として、目標設定とその達成状況管理があります。MBO(Management by objectives 目標による管理)、KPI(Key perfomance indicater 重要業績評価指標)マネジメント、BSC(バランススコアカード)、シックスシグマなどさまざまな手法が今までにも開発され適用されてきています。しかし、これらをうまく活用しきれていない日本企業が多いように感じられます。

目標管理の要件

どのマネジメント方法でも共通して、以下のようなステップで目標設定、管理を行います。

1.全社としての目標を設定、2.部門別に重要な要素に分解、3.評価指標を設定、4.担当者を設定、5.定量目標に落とし込み、6.アクションプランの設定、7.達成状況のモニタリング、改善(PDCAサイクル

また、目標を設定する際に満たすべき要件として「SMART」というものがあげられます。「SMART」とは以下の省略形で、目標設定する際のポイントになっています。

S=Specific 具体的であること、誰が読んでも何をするかわかること
M=Measurable 測定可能であること、達成したかどうか客観的に判断できること
A=Actionable アクションが打てること
R=Realistic 現実離れしていないこと
T=Time - Constrained 時間制限(締切)があること

文字にしてみると非常にシンプルですが、これらを本当に徹底できている会社は、少ないのではないでしょうか。また、部門、組織の目標はあるとしても、個人の目標とその達成状況をきちんとマネジメントできている会社はさらに少ないと感じています。

個人としての目標管理

「How google works」にも書いてありましたが、Googleをはじめとしたシリコンバレーの企業では個人別の目標管理としてOKR(Objectives and Key Result 目標と主要な結果)という手法を用いているといいます。

OKR (目標と主な結果) | Hiro Maeda

この取り組みのポイントとして、全社の目標と整合した部門の目標、個人の目標を設定するということ、個人の目標を社内に共有し、社内コミュニケーションを円滑にするということ、ということがあげられます。

また、「BetterWorks」というシリコンバレーのスタートアップが提供する、目標管理サービスがあります。

Goal setting software for the Enterprise | BetterWorks

これは、各組織の個人の目標および達成状況を管理するプラットフォームです。個人の目標が社内イントラに公開され、誰でも見られることによって各個人に推進するインセンティブが働くという仕組みになっています。

全社や組織の目標についてはSAP社等のERP(Enterprise Resource Planning 業務基幹システム)等でITによって効率的に管理されている企業は多いですが、個人の目標までITによって効率的に管理できている企業はまだまだ少ないと考えており、これによって効率的に成果が出せる環境づくりが進められると考えられます。

個人としての目標管理の注意点

上記のような形で個々人の目標を設定し、達成状況をモニタリングする仕組みは効果的だと考えますが、いくつか注意点があります。

1つ目は、会社としてのビジョンや目的が周知徹底されていない状況で、目標設定だけを行うとモラルハザードが発生するリスクがあることです。たとえば、コスト削減の目標を持つ部門が短期的なコスト削減のために品質を低下させ、かえって製品の信頼を損ねてしまうなどのケースが想定されます。したがって、全社としての目的、ビジョンを社員が共有した上で機能する仕組みであると考えられます。

2つ目は、組織、全社目標と整合させるために、トップダウンで目標を設定してしまうと「やらされ感」が発生し、個人が主体的に目標達成に取りくまないリスクがあることです。これを回避するためには、個々人が自ら自分の目標を主体的に設定する必要があります。ただし全社・組織目標と整合させるために、上長とのコミュニケーションを徹底的に行うという前提も同時に必要となります。

まとめ

日本には技術の優位性はありながらも「経営」がうまくいっていないことにより、競争優位を失っている企業が多くあります。その「経営」の中の重要な要素として、目標管理があるといえます。上記のように、個々人、組織、全社の整合した目標設定、達成状況管理を徹底して行うことによって、競争優位を取り戻す企業は多くあるのではないでしょうか。

また、この取り組みによって個人としても目的意識を持って、より達成感を感じる働き方ができるようになると考えています。

目標設定と達成状況の管理スキーム導入は、多くの企業にある程度の汎用性を持って展開できると考えられるため、この分野をコンサルタントとしての専門性にすることも考えていきたいと思います。