情報への入口を支配すること-テクノロジー企業の思惑-
最近のニュースや仕事を通じて、テクノロジー企業の巨人たちの狙いと取組みについて、少し見えてきたのでまとめたいと思います。
googleやAmazon、Apple等のTech業界の巨人たちは、「世界中の人々の情報の入口(インターネットへのタッチポイント)を支配し、自社の枠組みの中で生きさせること」を狙いとして動いていると考えられます。
それにより、人々の属性、趣味思考、行動特性の情報を収集し、人々の行動予測が可能になり、結果として人々は各社のエコシステムの中で生きることになります。
既存の入口における覇権争い(PC、モバイル)
この情報の入口を抑える取組みは、検索エンジンによってgoogleがPCからの入口を支配したところから始まりました。近年ではYelp等の口コミサイトからの直接流入やFacebook、Twitter等のSNSを入口とする傾向も増加しており、今後は一定のバランスで均衡がとられるでしょう。
モバイルでは、ハードウェア、OSを起点とするApple、検索エンジン、OSを起点とするgoogleが2大巨頭と考えられますが、Amazonもハードウェアから入口の覇権争いに参入し始めている状況です。
先進国の企業だけでなく、新興企業もこの覇権争いに参入し始めています。特に中国からはEC大手のAlibabaがウェブブラウザの企業を買収し入口強化の取組みを実施したり、Xiaomiが、ハードウェアを起点としてファンコミュニティを作り、Xiaomi端末を使う利用するユーザーの入口を支配しようと動いています。
新しい入口における覇権争い(TV、ウェアラブル、自動車、家)
各企業は既存の入口だけでなく、新しく入口となりうる部分についても覇権争いを始めています。主にTV、ウェアラブル端末、自動車、家等がその新たな戦場となっています。
TVでは、googleのchromecast、AmazonのfireTV、AppleのAppleTV等各社がTVを経由してインターネットに繋がるように新たな仕掛けをしています。
また、ウェアラブル端末でも各社が新端末の開発を実施しています。
少し話がそれますが、ウェアラブルとひとくくりにされている端末ですが、私は腕時計型と眼鏡型には圧倒的な影響力の差があると考えています。
腕時計型はあくまで、スマートフォンの機能の一部補助・代替が限度だと思われます。一方、眼鏡型では視野に入る現実世界の全てが情報(インターネット)との接点になりうると考えられます。これは世界中にある全ての物体に情報を付加できるということであり、その影響は計り知れないと思っています。具体的な影響についてはまた別の機会に考察したいと思います。
さらに自動車に関してはAppleはcarplay、googleも自動車用androidの開発を進めています。
また、家についてもgoogleのNest買収によるスマートハウスへの参入、Appleのホームオートメーション用homekitの公開等、入口化が着々と進んでいます。
上記の各企業は家を入口とする際のプラットフォームを提供しています。一方でそれぞれのプラットフォームに対するモジュール提供者も多く登場しています。最近興味深い取組みとしては、 クラウド発明サイトquirkyから通信機能を持ったガジェットに特化したwinkというのがスピンアウトした事例があります。http://techcrunch.com/2014/06/23/invention-machine-quirky-spins-out-wink-a-new-business-focused-on-the-connected-home/
支配した入口の統合とソニーの失敗
このように情報、インターネットへの入口は今後も増加し、人々のほとんど全ての活動がインターネットに繋がる状況が遠くない未来に実現すると思われます。
そして各社はより多くの入口を支配し、統合することで、より多くの人々に自社を生活基盤にさせ、囲い込むことを目指しているように見て取れます。
Appleはitunesを利用し、PC、モバイル、TV、ウェアラブルの入口を統合しようとしています。一方googleも同様にgoogleアカウント上でPC、モバイル、ウェアラブルを統合しようとしていると考えられます。
このような取組みの中で私はソニーに期待していました。
なぜならば、かつてソニーはPC、TV、モバイルの各事業を保有しており、その統合を誰よりも早く実現する可能性があると考えていたからです。
近年は、経営状態が悪く、多くの事業を縮小、売却しているソニーですが、この入口を押さえる取組みの重要性にいち早く気づいて動いていれば今とは状況が大きく違っていたように思います。
このような将来像を描ける人がいなかったか、社内の組織間の壁が厚く連携した戦略は実現できなかったか、ソフトウェア側の開発能力が不足していたのかはわかりませんが、ソニーが入口を支配統合する可能性は存分にあったように感じました。後出しじゃんけんをしてもしょうがないのですが、このような業界を越えた将来像を描けなければ勝っていけないのだろうと感じています。