思考・妄想の外部化-経営コンサルタントの頭の中-

仕事や読書、人々との会話を通して若手コンサルタントが日々考えている事を不定期にアウトプットしています。ビール好きなのでそれに関することも多少。

正しい判断は、最初の3秒で決まる -信念と直観の重要性-

あるブログ紹介されていた、慎 泰俊(しん てじゅん)という方の著書に非常に感銘を受けたので紹介したいと思います。

 

著者は激務で知られるPEファンドで働きつつ、NPOの立ち上げを行い、さらに著作も多数、ウルトラマラソンにも出場されるという非常に行動力のある方です。今回のタイトルにもなっている本では、著者がいかに意思決定の質と速度を高めるかということについて持論を展開しているのですが、非常に本質的、かつ熱く、共感できる部分があったので紹介したいと思います。

判断は直観、信念に基づいて一瞬で決まる

この本のメインメッセージは、「アイディアや判断は論理の積み上げではなく、無意識下のぐるぐるとした思考から突如訪れる。その判断は決してあてずっぽうなわけではなく、それまでの幅広く深い経験に基づいており、論理を超えたものである。このプロセスは形式知として明文化することは難しく、各人の中に暗黙知・身体知として蓄積される」ということです。

著者のPE業務においても、企業の分析をざっくりと行った段階で、ディスカッションを通じて投資仮説を立案し、それに基づいた投資意思決定を行い、その後検証の作業を行うといいます。

私の行うコンサルティング業務でも同様に、クライアント企業の問題・施策の仮説を立案し、それを検証・実現するための論理構築、検証作業を進めます。この点から思考形態は非常に似ていると感じました。

どちらのケースでも仮説を立案する段階では、十分な情報は収集し切れておらず、推定に基づいて仮説を立てる必要があります。経験の豊富な投資家やコンサルタントは、今までに仮説立案、検証を数多く行っており、推定のための引き出しが多いです。したがってより精度の高い問題仮説、施策仮説を短時間に立てることができるのだと考えられます。 

また、多くの経験から得られる意思決定の基礎となる部分が、信念であり直観である。その信念、直観を言葉にすることにより、信念はより強いものとなると著者は述べています。

個人としての信念・直観 

日々の仕事、生活の中で誰しも多くの意思決定を行う必要があります。そのときに、どのような信念に基づくか、つまり意思決定の軸を持つことで、よりよい選択ができるのではないでしょうか。

もちろんこの信念は一度決めたら変えない、という性質のものではなく常にアップデートしていくべきことだとは思いますが、あえて明文化したいと思います。

・新しい何かを学び続ける柔軟性・新しいことにチャレンジする

・何か心に引っかかる、後ろめたくように感じることはしない

・常に目標を設定し、その振り返りをするサイクルを回し続けること

 

あくまで現時点版ですが、これが私の信念、スタンスです。これらに基づいて発言・行動していこうと考えています。

また、これらを実現するためには、常に言葉にすること、アウトプットすること、習慣にすることが重要であると考えます。 ともすれば、自分が本当は何がしたかったか、何を大切にしているかということは忘れがちです。そんなときに、日々言葉・行動にして繰り返すことが信念を本当に定着させるためには重要だと考えます。

組織としての信念と直観

信念と直観という考え方は、個人だけでなく組織にも適用できます。

強い組織というのは上記の、信念や直観がミッションとして明文化され、文化として組織に根付いているように思います。代表的なところでは、TOYOTAカイゼンGoogleのDon't Be Evil、Amazonの顧客至上主義等があげられるでしょう。

一方、多くの組織ではミッションは「単なるお題目」として扱われ、組織の末端まではいきわたっていないために、形骸化しているのではないでしょうか。

Diversity(多様性)が重要だといわれる昨今ですが、多様化するべきはあくまで、やり方、スキル、専門性、性別、国籍などであり、本当にコアとなる考え方、つまり信念やミッションについては統一されているべきだと考えます。またいかに優秀なスキル、専門性を持っていても組織の信念に共感できないのであれば、その組織にいることは組織個人双方にとって不幸せなことだろうと考えます。

末端まで、信念、ミッションをいきわたらせる事は難しいですが、いくら手がかかったとしても繰り返し伝え続けていくしかないのだろうと感じます。

 

少し話がそれますが、大規模組織にもかかわらず、信念ミッションが組織の末端までいきわたっている組織として「宗教組織」があります。

彼らは信念(教義)を明文化し(聖書、経典)、日々の生活の中でそれを頻繁に読み返し(礼拝、ミサ等)、生活の中に習慣的に織り込むことによって、信念の共有を実現しています。

これを企業組織に応用すると、ともすれば宗教的企業=ブラック企業のようなレッテルを貼られがちです。しかし、組織が共通の信念を共有しつつ、各個人が自由に働ける環境を作るという視点では、宗教組織から企業組織が学ぶべき部分は少なからずあるのではないでしょうか。

 

本全体を通じて、私が日々考えていることと非常にフィットしており、新しい何かを得たというより、もやもやと頭の中にあった暗黙知形式知にしてもらったように感じました。これからも信念と直観を大切に、また判断の質・スピードを高めていくため、広く深く経験を積んでいこうと改めて感じた本でした。