ハゲタカのモデルとしての佐山氏−鷲津と芝野の二面性−
Newspicksのイノベーターズライフというコーナーで、PEファンドであるユニゾン・キャピタル、インテグラルの創設者である佐山さんの特集がされていました。
彼のキャリアは帝人でエンジニアとしてスタートし、その後、銀行でM&A業務に従事、バイアウトファンドを立ち上げ、東ハト、ワールド、スカイマーク等数々の話題のM&A案件にかかわられるという、非常に珍しいキャリアを積まれています。
私は真山仁の小説「ハゲタカ」のファンなのですが、この特集を読むと小説「ハゲタカ」の多くの描写が佐山さんの経験やキャラクターに基づいていることがわかりとても驚きました。
特に製菓メーカー東ハトの再生案件での佐山さんの立ち回りは限りなくハゲタカの主人公「鷲津」に近い物でした。
小説中では玩具メーカーの話にはなっていますが、破産寸前のメーカーの再生プランを立て、オーナーや経営層と交渉し、外資金融とのビット合戦にあらゆる人脈を使って勝つという流れは小説そのままです。この恐ろしいまでの周到さと勝つことへの徹底した姿勢は尊敬するとともに見習いたいと思います。*
一方で、買収した企業を再生・バリューアップさせるために、現場を回って汗をかいて実態を把握し、現場の人ともコミュニケーションを取って企業風土を変革していく取り組みは、むしろ小説で鷲津のライバルとして描かれているターンアラウンドマネージャー「芝野」を髣髴とさせます。
つまり、佐山さんは、小説では宿敵として描かれる鷲津と芝野の相反する2つの特性をどちらも持ち合わせていると言えます。彼は「人を信じずに、相手の裏の裏まで読み切る厳しさ」と、「人を信じ、地道にコミュニケーションを取ることで信頼を構築し事業を再生させる優しさ」を両方持っており、とても魅力的に感じました。
余談にはなりますが、私が大学生の頃、佐山さんが講義に来られたことがあり、少しだけお話をしたことがあります。彼は学生に対しても気取ったり、偉そうにすることなく非常に親しみやすい人柄の方でした。また、その時も彼は特集と同じように「面白そうなもの」に取り組んできたとおっしゃっていました。私は、この考え方はスティーブジョブスの「Connecting Dots」とも似た考え方だと捉えています。私もその時々の「面白そうなもの」に対してアンテナを立てて、それぞれに全力で取り組んでいきたいと思います。
*以前、ハゲタカから学んだことについて記事
「ハゲタカ」「バイアウト」「レッドゾーン」「グリード」-鷲津政彦に学ぶビジネスで成功するための本質- - 思考・妄想の外部化-経営コンサルタントの頭の中-