思考・妄想の外部化-経営コンサルタントの頭の中-

仕事や読書、人々との会話を通して若手コンサルタントが日々考えている事を不定期にアウトプットしています。ビール好きなのでそれに関することも多少。

「ハゲタカ」「バイアウト」「レッドゾーン」「グリード」-鷲津政彦に学ぶビジネスで成功するための本質-

最近、少し前にドラマ化・映画化もされていた真山仁による金融小説「ハゲタカ」にはまっています。ターンアラウンドファンド「ホライゾンキャピタル」「サムライキャピタル」の企業買収者、鷲津政彦が日本企業、政財界、ひいてはアメリカの軍事ファンドや中国の国家ファンドを相手に天才的手腕で企業買収を行うというストーリーです。純粋なエンターテイメントとして、またバブル崩壊後、失われた20年、リーマンショック前後で何が起きていたのかということについて学べる、良書だと思います。

中でも、鷲津の行動から「ビジネスで成功する、勝つための本質」を学ぶことができる点がこの小説の何よりの魅力です。以下にその「本質」を紹介したいと思います。

相手の先を読み、先手を打つ

作中で鷲津は対象企業の買収をめぐり、多くの敵と争うことになります。あるときは被買収企業の幹部、あるときは競合の外資投資銀行、またあるときは中国の国家ファンドなどです。

鷲津はどのような相手を敵とするときにも、相手が本当は何を狙っているか、その意図と戦略を読みきり、その上でさらに先を行く手を打ちます。

自分の置かれるゲームの状況・構造を把握、あらゆる状況を想定し、先の先の先を読む、また想定外の自体にも対応できるようセーフティーネットを張ることを怠りません。

仲間の求めるところを提供し、敵の痛いところをつく、孫子が言っていた「己を知り敵を知れば百戦危うからず」を実践しているように感じます。

 

先を読むためにあらゆる人脈・方法を使って情報を抑える

相手の動きを先読みするには、徹底的な情報収集が必要条件となります。

鷲津はかつての敵や、一見無理と思うようなルートでも手段を選ばずに情報を取ってきます。またそのために、優秀かつ信頼できる情報収集者のチームを持っています。

そのように、きわめて繊細に情報を押さえ、徹底的に裏を取った上で大胆な戦略に出るのです。

調査会社サムがCIA出身というのはいかにもフィクションのように感じますが、実在のPEファンド「KKR」の調査組織の会長に前CIA長官が任命された話を聴くと、情報収集が勝負のキーとなる点は現実世界でも同様なのだろうと感じます。

ペトレアス前CIA長官、投資会社KKRに就職 - WSJ

 

必要な人を動かすためにあらゆる手を使う

鷲津は目的のために必要な人はあらゆる手を使って巻き込み、意図のとおりに動かします。そして、油断させるためには、あえて冴えない風貌を使う、メディアによる世論操作まで行うといった周到ぶりを見せます。

また、人を動かすためには論理的な正しさや、合理的なメリットを示すだけでは不十分で、相手の感情や、微妙な権力関係も踏まえた仕掛けをすることが必要になると教えてくれます。

 

常にあせらず、冷静を保つ。感情を効果的に使う

多くの敵と戦うなかで、鷲津はさまざまな衝突、挑発、修羅場に遭遇します。そのような環境であっても、冷静さを保ち、決して感情のコントロールを失わないこと。また時には意図的に怒りや挑発を使い、交渉や議論を自分の土俵・ルールに持ち込んでいます。

 

このように、ハゲタカから「勝つための本質」を学んだように思います。

作中では外交問題や、日本を代表する企業の買収が描かれており、私たちの日々行う仕事とはスケールが違う話ですが、上に述べた本質の部分は日々の仕事にも行かせるのではないでしょうか。

顧客、上司の求めることを先読みし、先手を打つ。競合を出し抜くために徹底的に情報を集める。必要な人に動いてもらうために、論理・感情の両面からできうるお膳立てをするなど、スケールは小さいかもしれませんが鷲津のマインドをもって働いてみると今よりも高い成果を出せるように思います。