思考・妄想の外部化-経営コンサルタントの頭の中-

仕事や読書、人々との会話を通して若手コンサルタントが日々考えている事を不定期にアウトプットしています。ビール好きなのでそれに関することも多少。

結果を出すリーダーはみな非情である-変革者になるために必要なこと-

日々の仕事の中でどのようにリーダーシップを取っていくか、結果を出すリーダーの条件は何なのか考えたことはないでしょうか。表題の本はまさにその問いへの答えともいう本です。

本書のタイトルとメッセージは少し異なっており、メインメッセージは日本の企業においては「ミドルリーダー」というべき課長クラスが実際の影響力を持っており、彼らの能力が企業全体の成果を大きく左右するということでした。

まず、なぜミドルリーダーの能力が大きな影響力を持つのか、次に変革を生み出すミドルリーダーとなるには何が必要なのか、本書の内容を基にまとめたいと思います。

なぜミドルリーダーが影響力を持つのか

1.日本の企業の意思決定はトップダウンではないため

日本企業における意思決定方法では、事前のオプション作成の時点で実質どのオプションをとるかについての意思決定は完了しており、経営層は承認するのみとなるケースも多くみられます。したがって意思決定権は実質的にオプションを作成する課長クラスにあり、会社全体の方針を決めうるといえます。

 

2.現場の情報と、上層の情報が両方入ってくるため

正しい意思決定を行うためには、その根拠となる情報を早く、正確に把握することが必要になります。このように考えたときに、経営層では現場の情報は課長クラスを経由してまた聞きすることになり、スピードに欠けます。一方、課長クラスは現場の情報も経営層の情報も両方タイムリーに把握することが可能です。この背景から、課長クラスが会社全体の情報のハブとなるケースが多く見られます。

 

3.フットワーク軽く動き回れるため

多くの日本企業では、外資系の企業と比較して業務分掌がそこまで明確に定義されておらず、本業とは関係のない部門を横断して働きかけることが許容されています。いいかえれば課長クラスによる越権行為が認められているともいえます。

変革を起こせるミドルリーダーになるには

1.論理と情理で人を動かすためのスキルを磨く

人を説得するための前提として、徹底的にファクトやデータに基づいて論理を構築することがあげられます。論理とは正しい判断をするためのツールである以上に、人に理解を促し、納得してもらうためのツールであると考えています。また、意思決定をする際に情に流されては効果的な決定はできず、今までの努力や過去の成果に影響されてしまうと変革は起こせません。そのため、時に非情ともとられかねない判断が必要になります。

一方で、人を巻き込んで変革を起こすには論理だけでは十分ではありません。人が理解してから実際に行動するまでには、利害関係や、個人の感情も大いに影響するためです。したがって社内の政治や、個人の感情の問題も同時に満たす交渉力、つまり「情理」が求められます。

 

2.経営層の視点で会社を捉える

変革を起こす際には多くの場合、自分の部門だけではなく他部門、場合によっては他社を巻き込む必要があります。このような時には自部門の目標だけではなく、その取り組みが会社全体として、ひいては社会にどのような意味を持つかを考えながら働くことが重要です。

つまり視点を経営層のレベルまで引き上げ、会社全体、取り巻くステークホルダーを含めた関係性全体を構造的・システム的に捉えるということが求められているといえます。

 

これらの変革を起こすミドルリーダーに必要な条件が実現できれば、現在所属している企業において変革を起こすことに限らず、どのような環境でも価値を発揮できる人材になるでしょう。

上記の条件を振り返ると、コンサルタントという仕事は、経営層の視点で考え、クライアントを動かすという点で変革者となるための有効な職種かなと改めて思います。

常にクライアントの変革を目的としていますし、理論的、構造的に考える癖はつきます。また、プロジェクトベースで3ヶ月~6ヶ月という短い期間に目的を果たすことが求めれるため、プロジェクトの目的は常に意識させられる環境にあります。

最近の課題として、クライアントの求めるものを提供することは前提として、時には衝突を恐れずにクライアントに反する事もいう必要があると感じています。八方美人になってしまうと結果的に良い成果は得られず、変革は起こせないと改めて思います。

変革とは反対を伴うからこそやりきるのが難しく、また意義があるのでしょう。